私は以前、大手消費者金融の審査部門で働いていました。在籍中、コールセンター経由で一番多く回ってきた問い合わせが「なぜ審査に落ちたのか教えてほしい」というものです。
答えはいつも決まっていました。「審査基準については一切お答えできません」。マニュアルでそう決まっているからです。理由を教えると、次の申込で「対策」されてしまい、審査が機能しなくなる。だからどの会社も、絶対に理由を言いません。
でも、落ちた側からすればたまったものではないですよね。理由も分からず、対策のしようもなく、ネットで「審査 甘い」と検索して怪しい情報にたどり着く。この流れを私は何百回も見てきました。
私はもう「中の人」ではありません。なので今回は、審査で何が減点されるのか、逆に何が意外と見られていないのか、書けるところまで全部書きます。
先に断っておくと、審査基準は各社バラバラで、私が知っているのは在籍していた一社の、しかも当時の仕組みです。細かい配点は会社と時期で変わります。ただ、「落ちる人が勘違いしているポイント」は、業界共通だと断言できます。
まず結論:あなたを審査しているのは人間ではない
一番大きな勘違いから潰します。消費者金融の審査は、9割方コンピューターのスコアリングで決まります。
申込フォームに入力された属性(年齢・年収・勤務先・居住形態など)を項目ごとに点数化し、信用情報機関に照会した結果と突き合わせて、合計点が基準を超えていれば可決、下回れば否決。人間の審査担当が個別に目を通すのは、ボーダーライン上の案件や高額の申込など、一部だけです。
つまり、「事情を説明すれば分かってもらえるはず」「誠意を見せれば」という発想は、審査においてはほぼ意味がありません。機械がどこで点を引くのかを知ること。それが唯一の対策です。
【暴露】減点される項目リスト(1)属性編
まず申込フォームの入力内容、いわゆる属性です。重く見られる順にいきます。
雇用形態と勤続年数:年収の「額」より重い
意外に思われるかもしれませんが、審査で一番効くのは年収の額ではありません。「その収入が来月も再来月も続くか」です。
- 雇用形態は、正社員・公務員 > 契約社員 > 派遣 > パート・アルバイト > 自営業、の順で点差がつくのが一般的
- 勤続年数は1年未満で減点、3ヶ月未満だと大幅減点。転職直後の申込は、それだけでかなり不利
- 年収600万で勤続2ヶ月の人より、年収250万で勤続5年の人の方がスコアが高い、ということが普通に起きる
自営業・フリーランスが厳しめに見られるのも同じ理屈です。収入の「波」はスコアリングが一番嫌うものです。
居住形態と居住年数
持家(本人または家族名義)> 社宅・寮 > 賃貸、の順。さらに居住年数が短いと減点です。理由は単純で、引っ越しされると連絡が取れなくなるリスクを貸す側は常に計算しているからです。賃貸だから落ちる、ということはありませんが、点数上は差がつきます。
健康保険の種類
これは知らない人が多い項目です。勤務先の社会保険 > 国民健康保険、で差がつきます。社保は「ちゃんとした勤務先に在籍している」ことの裏付けになるからです。書類提出の段階で効いてきます。
電話・家族構成
昔は「固定電話がないと減点」という時代がありましたが、今は携帯のみで問題ありません。家族構成は会社によって扱いが違い、独身一人暮らしより実家同居がやや有利になるケースがあります。生活費の負担が軽い=返済余力がある、という見方です。このあたりは微差なので気にしすぎる必要はありません。
【暴露】減点される項目リスト(2)行動編
属性は今すぐ変えられませんが、こちらは申込のやり方そのものの話です。自滅パターンとも言います。
短期間の複数申込(申込ブラック)
申込履歴は信用情報に約6ヶ月残り、審査時に全部見えます。1ヶ月に3社以上並んでいると、「相当お金に困っている」と機械的に判断されて大幅減点。1社落ちて焦って次、また次……は、審査側から見ると一番分かりやすい危険信号です。
年収を盛る・他社借入を少なく書く
断言しますが、バレます。他社借入は信用情報の照会で全社分の残高が正確に出ますし、年収も収入証明の提出や勤務先・勤続年数との整合性チェックで乖離が分かります。そして虚偽申告と判断された瞬間、スコア以前の問題で否決です。「多少盛った方が通りやすい」は完全に逆で、正直に書いた方が通ります。
希望額をいきなり上限で申し込む
希望額50万円超になると収入証明書の提出が必要になり、審査も慎重になります。初回から限度額いっぱいを狙う申込は、それだけで警戒対象。初回は10〜20万円で申し込み、返済実績を作ってから増額するのが、中の人から見ても一番スムーズな通り方です。
入力ミス・矛盾
勤務先の電話番号間違い、生年月日のズレ、前回申込と食い違う勤務先情報。故意でなくても「申告内容が確認できない」として否決や保留の原因になります。地味ですが、否決理由としては本当に多いです。
【暴露】減点される項目リスト(3)信用情報編
最後が信用情報、いわゆる「クレヒス」です。ここに傷があると、属性がどれだけ良くても覆せません。
- 長期延滞(61日または3ヶ月以上):いわゆる異動情報。これがあると大手はほぼ否決
- 債務整理・代位弁済・強制解約:同上。記録が消えるまで5〜10年かかる
- スマホ端末の分割払いの延滞:機種代の分割は立派な割賦契約。「携帯代の払い忘れ」が信用情報の傷になっているケースは本当に多い。審査部門にいた頃、属性は完璧なのに携帯延滞で落ちる人を何人も見た
- クレジットカードのリボ・キャッシング残高:借入としてカウントされ、総量規制の計算にも影響
ちなみに延滞を放置すると何がどう進むかは、別記事で元債権回収マンが時系列で書いています。あちらを読むと「61日」の重みが分かるはずです。
「真っ白」も実は警戒される(スーパーホワイト)
これも中の人ならではの話を。信用情報に何の記録もない「真っ白」な人、実は年齢によっては警戒されます。20代前半の真っ白は「初めてのカード」で自然ですが、40代で借入もカードも一切履歴がないと、「過去に債務整理をして記録が消えた直後では?」という見方をされるのです。理不尽に聞こえますが、スコアリングとはそういうものです。逆に言うと、借りてきちんと完済した履歴はプラスに働きます。「一度でも借りたら人生終わり」どころか、良いクレヒスは資産です。
意外と減点されないものリスト
逆に、みんなが気にするわりに、ほとんど見られていない項目も挙げておきます。
- 転職回数そのもの:見られるのは「今の勤務先の勤続年数」。過去に何回転職していても直接の減点はない
- 賃貸住まい・独身:微差はつくが、これだけで落ちることはない
- 奨学金:原則として貸金業の信用情報とは別枠。延滞して保証機関が動いた場合などを除き、審査には影響しない
- 過去に消費者金融を使った履歴:完済していればマイナスどころかプラス評価になり得る
- 職業のイメージ:夜職・水商売でも、収入の安定を示せれば申込自体は可能。ただし収入証明を出しにくい働き方だと、その点で不利にはなる
- 申し込む時間帯・曜日:「月末は審査が甘い」「午前中は通りやすい」は全部都市伝説。スコアリングに時間帯の項目はない
元審査担当が教える、減点を避ける申込み方
ここまでの内容をひっくり返すと、そのまま対策になります。
- 全項目を正直に、正確に書く。盛らない。これが最大の攻略法という身も蓋もない事実
- 希望額は必要最小限。10〜20万円スタートで、実績を作ってから増額申請
- 申込は1社に絞る。落ちたら最低6ヶ月空ける
- 転職の予定があるなら、勤続年数がリセットされる前に生活を整理しておく。転職直後の申込は属性上一番不利なタイミング
- 不安なら申込前に自分の信用情報を開示してみる。CICやJICCにスマホから1,000円前後で請求でき、延滞記録や申込履歴が全部見える。審査する側が見ているものを、先に自分で見ておくということ
おまけの暴露:人間の審査担当が出てくる瞬間
「9割は機械」と書きましたが、残り1割の話もしておきます。人間の審査担当が案件を目視するのは、主にこういうときです。
- スコアがボーダーライン上のとき:可決とも否決とも言い切れない点数帯は人間が最終判断する
- 申告内容に矛盾や引っかかりがあるとき:勤務先の実在確認が取りにくい、前回申込と情報が違う、など
- 希望額が大きいとき:高額案件は機械の点数だけでは通さない
このとき人間が何を見るかというと、書類の整合性と、電話でのやり取りの自然さです。よく「審査の電話で好印象を与えるコツ」みたいな記事がありますが、愛想の良さは点数になりません。見ているのは「申告内容と話が食い違わないか」だけ。つまりここでも結局、正直に書いた人が一番強いのです。
あと、審査結果の連絡が遅いと「落ちたのでは」と不安になる人が多いですが、遅い=否決ではありません。むしろ即否決の方が早く出ます。時間がかかっているのは、目視に回っているか、在籍確認が取れていないか、申込が混み合っているか。慌てて別の会社に申し込むのが一番の悪手です。
よくある質問(元審査担当の視点で)
Q. 一度落ちた会社には、もう二度と通らない?
A. そんなことはありません。社内に申込記録は残りますが、6ヶ月経って属性が改善していれば(勤続が伸びた、他社残高が減った等)普通に通ります。逆に、状況が何も変わっていないのに再申込しても結果は同じです。
Q. 審査は土日でもやっている?
A. 大手は土日も審査していますが、在籍確認の電話が会社の休みで取れず、結果が週明けにずれ込むことはよくあります。急ぐなら平日の午前中に申し込むのが確実です。
Q. 増額審査は新規より甘い?厳しい?
A. 返済実績が積み上がっていれば新規より有利です。ただし増額申込をきっかけに再審査(途上与信)が走るので、他社借入が増えていたり延滞があったりすると、逆に減額や利用停止になることもあります。寝た子を起こすリスクはあると覚えておいてください。
Q. 属性が悪いなら、中小の消費者金融に行けばいい?
A. 中小は大手より柔軟に見てくれる場合がありますが、必ず貸金業登録番号を金融庁の検索サービスで確認してください。登録のない業者は闇金です。「大手に落ちた→無登録業者へ」は、審査部門から見ていて一番心が痛む転落コースでした。
それでも落ちたときに、絶対やってはいけないこと
最後に、審査部門にいた人間として一番伝えたいことを書きます。
大手の審査に落ちた直後の人は、貸す側から見ると「一番カモにしやすい状態」です。そこを狙って「審査なし」「ブラックOK」「即日現金」の広告やDMが寄ってきます。これは例外なく闇金です。SNSの個人間融資、後払い現金化も中身は同じ。年利換算で数百〜数千%の世界で、一度入ると抜け出すのは本当に大変です。
そして、もし「複数社の返済のために新しく借りようとして落ちた」のなら、それは審査対策の問題ではありません。借り増しではなく、おまとめローンでの一本化や債務整理を検討する段階です。相談は市区町村の消費生活センター、日本貸金業協会の窓口、法テラスで無料でできます。審査に落ちたことは、立ち止まるきっかけとしては悪くないのです。
まとめ:審査は「人格」ではなく「点数」の話
審査に落ちると、自分が否定されたような気分になります。でも中の人だった立場から言わせてください。審査はあなたの人格を評価していません。入力された属性と信用情報を、機械が点数にしただけです。
減点の仕組みが分かれば、打てる手も、待つべき期間も、避けるべき罠も見えてきます。焦って怪しい方向に行かないこと。それだけ守ってもらえれば、この記事を書いた意味があります。
※本記事は筆者の経験に基づく一般的な情報提供を目的としたもので、特定の借入を推奨するものではなく、すべての貸金業者の審査基準を保証するものでもありません。審査基準・サービス内容は各社異なります。返済にお困りの場合は、消費生活センターや日本貸金業協会の相談窓口、法テラス等にご相談ください。




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