「クレジットカードの審査に落ちた。ブラックリストに載ったかもしれない」そんな不安を口にする人は後を絶ちません。
しかし、金融業界の現場において「ブラックリスト」という名前の名簿は存在しないことをご存知でしょうか。
存在するのはあなたの金融取引の事実が淡々と記録された「信用情報(Credit Information)」というデータベースだけです。
審査担当者はそこにある「記号」を見て、あなたの信用力を機械的に、そして冷徹に判断しています。
もしあなたが審査に通らないのであれば、それは「運が悪かった」のではなく、あなたの信用情報のどこかに、審査AIが「NO」と判断する致命的な「記号」が刻まれているからです。
日本で最も利用されている信用情報機関「CIC(シー・アイ・シー)」の開示報告書をベースに、ネット上のあやふやな情報を一刀両断します。
「どの記号がついたらアウトなのか」「その情報は正確にいつ消えるのか」など、審査の裏側にあるロジックを徹底的に解説します。
これを読めば、あなたの金融人生における「現在地」と「出口」が明確に見えてくるはずです。
そもそも「信用情報(CIC)」とは何か?大人の通信簿の正体
私たちがクレジットカードを作ったり、スマートフォンを分割払いで購入したりすると、その契約内容や支払い状況はすべて「指定信用情報機関」に登録されます。
日本には主にJICC、KSC、CICの3つの機関がありますが、クレジットカード会社や信販会社(携帯電話の割賦販売など)がメインで加盟しているのが「CIC」です。
CICに登録されているのは個人の氏名や生年月日といった属性情報に加え、「いつ契約したか」「毎月いくら請求され、いくら入金したか」「支払いに遅れはないか」といった事実の羅列です。
ここに感情や言い訳が入る余地はありません。
「うっかり忘れていた」のか「お金がなくて払えなかった」のかに関わらず、期日にお金が届いたかどうかという結果だけが記録されます。
カード会社やローン会社は新規申し込みがあった際、必ずこのデータベースにアクセスします。
そして、過去の支払い履歴(クレジットヒストリー、通称クレヒス)を参照し、「この人は約束を守れる人間か」を判断します。
つまり、信用情報とは金融社会におけるあなたの「大人の通信簿」そのものなのです。
審査担当者はここを見る!「入金状況」の記号($・A・P)を完全解読
CICの開示報告書を取り寄せると、最も重要な「入金状況」という欄に、アルファベットや記号が並んでいます。
審査の合否を分けるのは年収の高さではなく、実はこの記号の並び方です。
多くの解説サイトでは省略されがちな、この「記号の意味」を正しく理解しましょう。
最高評価の証「$(ドルマーク)」
これは「請求額通りに入金があった」ことを示します。
ズラリと「$」が並んでいる状態は審査担当者から見て最も美しい景色です。
これが並んでいる限り、住宅ローンだろうがプラチナカードだろうが、審査で不利になることはまずありません。
黄色信号の「P(一部入金)」と「A(未入金)」
ここからが問題です。
「P」は「請求額の一部しか入金されなかった」ことを示します。
リボ払いのことではなく、あくまで「約束した金額に足りていない」状態です。
そして最も危険なのが「A」マーク。
「お客様の事情で約束の日に入金がなかった(未入金)」ことを意味します。
審査の現場では直近の履歴に「A」が1つあるだけで、カードの発行を見送ることがあります。
たった1回の遅れでも、機械審査では「約束を守れないリスクのある顧客」とフラグが立つからです。
もし「A」が連続している場合、それはもう「返済能力がない」と判断されているのと同義です。
意外な落とし穴「ー(ハイフン)」と「空欄」
「ー」は請求自体がなかった月、「空欄」はクレジットの利用がなかった月を指します。
これ自体は悪くありませんが、あまりにも長期間「空欄」が続いている(カードを持っているのに全く使っていない)場合、更新時にカード会社から「使わないなら解約しますか?」と判断される材料になることがあります。
いわゆる「ブラックリスト」の正体は『異動』という2文字
では巷で言われる「ブラックリスト入り」とは具体的にどういう状態を指すのでしょうか。
それはCICの「お支払の状況」という欄に、『異動』という2文字が記載された状態のことです。
この『異動』情報は単なる支払い遅れとはレベルが違います。
「返済日より61日以上または3ヶ月以上の支払遅延(延滞)があるもの」と定義されており、金融事故として処理されたことを意味します。
この文字が記載されている間は新規のクレジットカード作成、新規のローン契約、スマートフォンの分割購入、賃貸の保証会社審査など、あらゆる「信用」を担保とする契約が絶望的になります。
よく「ブラックでも借りれた」という体験談がありますが、それは正規の金融機関ではなく、違法な闇金業者か、極めて特殊な中小消費者金融の事例です。
大手カード会社や銀行において、『異動』情報のついた人間に融資をする稟議が通ることはシステム上まずあり得ません。
若者が陥る罠!「携帯代の割賦」が将来を壊す
近年、特に20代〜30代の間で「知らないうちにブラックリスト入りしていた」というケースが急増しています。
その最大の原因が「スマートフォンの分割払い」です。
iPhoneなどの高額な端末を「実質0円」や「24回払い」で購入する場合、それは携帯電話料金と一緒に支払われていますが、法的には立派な「クレジット契約(割賦販売契約)」です。
つまり、携帯代を「たかが数千円」と甘く見て滞納すると、それは「借金の返済を滞納した」のと同じ扱いになり、CICにしっかりと『異動』情報が登録されてしまうのです。
「携帯代を止めたまま放置していたら、就職して初めてクレジットカードを作ろうとした時に審査に落ちた」という悲劇はこの仕組みを知らないことで起きています。
携帯キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク等)はすべてCICに加盟しています。
通話料だけの滞納なら信用情報には傷がつきませんが、端末代金が含まれている場合は致命傷になります。
いつ消えるのか?「保有期限」の正確な計算式
一度『異動』がついたら一生終わりなのか?
もちろん、そんなことはありません。
信用情報には「保有期限」があり、一定期間が経過すれば情報は抹消されます。
しかし、この「いつ消えるか」の計算方法を間違えている人が非常に多いのです。
一般的に「5年で消える」と言われますが、これは「延滞し始めた日」から5年ではありません。
「延滞を解消した日(完済した日)」、または「契約終了日」から5年です。
例えば、あなたが借金を長期延滞し、そのまま放置しているとします。
その間、ずっと『異動』情報は残り続けます。
そして、ようやく重い腰を上げて全額完済したとします。
ブラックリスト期間(5年のカウントダウン)が始まるのはその「完済した日」からです。
つまり、「逃げ続けている間は、永久にブラックリストのまま」ということです。
時効の援用などの法的手続きをとらない限り、放置すればするほど、社会的信用が回復する日は遠のいていきます。
これが、信用情報における最も残酷で、かつ公平なルールです。
逆に怪しい?「スーパーホワイト」というリスク
最後に、少し変わったリスクについてお話しします。
それは「過去に一度もカードやローンを利用したことがない」という人です。
信用情報が真っ白な状態を通称「スーパーホワイト」と呼びます。
20代前半までなら何の問題もありません。
しかし、30代、40代になっても信用情報に一切の履歴がない場合、審査担当者はこう疑います。
「この人は過去に金融事故を起こして、長い喪明け(データが消えるまでの期間)を経てデータが白紙になった元ブラックの人ではないか?」と。
現金主義を貫いてきただけの人にとっては迷惑な話ですが、審査システム上、「借金をしたことがない優良な人」と「元ブラックでデータが消えた人」の見分けがつかないのです。
そのため、ある程度の年齢になったら、携帯電話の分割払いや、作りやすい流通系カード(楽天カードやイオンカードなど)で、あえて「$」マークの履歴(クレヒス)を積み上げていくことが、将来住宅ローンなどを組むための「信用の証明」になります。
信用情報は嘘をつかない。まずは「開示」から始めよう
信用情報(CIC)はあなたを監視するためのものではなく、あなたが積み上げてきた信用の証です。
審査に落ちるには必ず理由があり、その答えはすべてCICの開示報告書の中にあります。
もし、ご自身の信用状態に不安があるなら、ネット上の憶測で悩む前に、CICの公式サイトから自分の情報を開示請求してみてください(スマホで簡単に、1,000円程度で可能です)。
そこに『異動』の文字がなければ、審査落ちの原因は他にあるかもしれません。
もし『異動』があったなら、いつ完済すれば最短で信用が回復するのか、具体的な計画を立てることができます。
現実は時に厳しいものですが、正しいデータを知ることこそが、経済的な自由を取り戻すための最初の一歩なのです。




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